こんにちは。海快晴の気象予報士の竹内です。
梅雨が終わると、いよいよ台風シーズンが到来します。
そこで、そもそも台風とは何か、また台風発生時に海のアクティビティで注意すべきことなどをお伝えしたいと思います。
そもそも台風とは何か?
台風の対策をするためには、まずは台風をよく知ることが大切です。
台風とは、東経180度より西の北西太平洋および南シナ海に存在する熱帯低気圧のうち、最大風速が約17m/s以上になったものを指します。
熱帯低気圧とは何かと言うと、熱帯や亜熱帯で発生し、暖かい海からの大量の水蒸気をエネルギー源とする低気圧のことです。
それに対して、普段日本付近を通過する低気圧は温帯低気圧と言い、これは北の冷たい空気と南の暖かい空気が混ざろうとする時にできる低気圧で、南北の気温差をエネルギー源としています。(つまり、南北の気温差が大きければ大きいほど温帯低気圧は発達します)
水蒸気をエネルギー源にするってどういうこと?と思うかもしれませんが、もう少し詳しく説明すると、
海水が暖かい
↓
海水が蒸発しやすい
↓
空気中の水蒸気が多くなる
↓
空気が上昇して冷えると水蒸気が水滴(雲)になり、そのときに熱を出す
↓
水蒸気が多いと雲が沢山できて熱もより多く出る
↓
熱を持った雲は空高く発達する
↓
台風の元になる積乱雲ができる
というメカニズムで台風は発達していきます。
つまり、台風(もしくは台風の元となる熱帯低気圧)の発生や発達には、暖かい海水が必須条件となります。
一般的に、台風は海水温が26~27℃以上で発生し、28℃以上あると発達すると言われています。
夏から秋にかけては、台風の発生域となる低緯度の海水温だけでなく、日本付近の海水温も高くなるため、台風が発達した状態で日本付近を通過しやすくなります。
下図は、2024年7月16日の日本付近の海水温です(気象庁より)。
これを見ると、関東より西の太平洋の少し沖合ではほとんどが28℃以上となっており、南西諸島より南では30℃以上あることがわかります。
こうした海水温の高い状態になると、いつ日本の南で台風が発生して、日本付近に発達した状態で接近してもおかしくない状況になります。
逆に、海水温が25℃以下の海域では台風が進んでいっても徐々に衰弱していくことになります。
台風が発生したとき、日本付近の海水温を把握しておくと、台風が勢力を維持して接近するかどうかがおおよそわかります。
以下の気象庁の海面水温実況図を参考にすると良いでしょう。
海面水温実況図(気象庁)
ちなみに、台風は暖かい海水(からの水蒸気)をエネルギー源としているので、台風が発生・発達して通過していくと、その付近の海域の海水温は下がります。
ですので、1回台風が発生すると、次に同じ海域で台風が発生・発達するには海水が暖まる必要があるため、多少時間がかかります。
近年は地球温暖化などの影響もあり日本付近の海水温が高くなりやすく、台風が日本付近で急に発生したり、変則的なコースをとったりすることもあります。
これまでの常識が通用しない台風も発生したりするので、注意しましょう。
台風の波
台風発生時のマリンアクティビティにおいて最も注意しなければならないのが、台風による『波』です。
まず、波について詳しく解説します。
波には『風浪』と『うねり』の2種類がある
風浪とは、海上で吹いている風によって生じる波で、波の形状は不規則で尖(とが)った形をしています。
一方、うねりとは、風浪が風の吹かない領域まで進んだり、海上の風が弱まったり風向きが急に変化するなどして、風による発達がなくなった後に残される波のことです。
うねりは減衰しながら伝わる波で、その形状は規則的で丸みを帯び、波の峰も横に長く連なっています。
風浪の発達の3条件と台風のうねり
風浪は、以下の3つの条件が揃ったときに発達します。
①風が強い
②風が長時間吹く
③風が長い距離を吹く
この3つの条件が揃うのが『台風』なのです。
台風の中心付近では風浪が非常に発達します。台風の強さにもよりますが、高さ10mを超える巨大な風浪が発生したりします。
その巨大な風浪が風の吹かない領域まで進むとうねりになりますが、元の風浪が巨大なため、減衰しつつもそのパワーは衰えず、数千kmうねりとして伝播していきます。
台風のうねりは、波の周期として顕著に表れてきます。
通常、波の周期は8秒前後であることが多いのですが、台風のうねりの周期は12秒以上にもなります。
下図は台風が日本の南にあるときの海快晴(沖合予報)の風画像になりますが、その下の図は同じ時間のうねりの周期になります。
これを見ると、台風から離れている東日本の太平洋側で周期12秒以上の紫色の領域が広がっているのがわかりますが、これが台風のうねりになります。
台風のうねりがいつ届くか知りたい場合は、下記の海快晴の沖合のうねり周期画像を見るとわかります。
台風のうねりは非常に危険
うねりは風浪よりも周期(波長)が長いため、水深の浅い海岸付近(防波堤、磯、浜辺など)では海底の影響を受けて波が高くなりやすい性質を持っています。
そのため、台風のうねりは海岸付近で急激に高波となり、波にさらわれる事故などが発生しやすくなります。台風が日本に接近していなくても十分に注意が必要です。
また、100個の波のうちの1つ(おおよそ10~20分間に1回)は、約1.5倍くらいの高さの波が来て、1,000個の波のうちの1つ(おおよそ2~3時間に1回)は、2倍くらいの高さの波が来ると言われています。
そのため、長時間海にいる場合は通常の2倍くらいの高い波が来る、ということを念頭に入れておくと良いでしょう。
さらに、台風のうねりが入るようになると、『離岸流』と呼ばれる岸から沖へ払い出す流れも強まります。
その流速は毎秒2mに達する場合もあり、水泳のオリンピック選手でも流れに逆らって泳ぐことが出来ない程です。
離岸流が発生しやすい海岸は、
・近くに人工構造物がある所
・波が海岸に対して直角に入る所
・海岸が外洋に面している所
・遠浅で海岸線が長い所
と言われています。
台風のうねりが入ると離岸流も強まるので、上記のような場所では海に入らないことが大事です。
もし離岸流に巻き込まれた場合は、離岸流の幅は10~30メートル程度とあまり広くないので、岸と並行に泳いで離岸流から離れるようにしましょう。
過去の台風コラム
海快晴では、これまでも気象予報士による台風に関するコラムを書いています。
是非ご一読ください。
土用波(台風のうねり)について 唐澤予報士
ご存知でしたか?台風の『名前』 唐澤予報士
それでは、海快晴を引き続きよろしくお願いいたします。