2020年の7月は、台風の発生が0という記録的な月となりました。
7月に台風の発生がなかったのは、1951年の統計開始以降初の事例です。
※なぜ7月に台風が発生しなかったのかについては、こちらをご覧ください。
台風の発生が0ということで、少し気がかりなことがあります。
それは、「サンゴの白化」です。
サンゴの白化は様々な要因があることが報告されていますが、その要因のひとつに「海水温の異常上昇」が挙げられます。
台風が海上を通過するとき、その周辺の海水が攪拌(かくはん)される(=混ぜられる)ことが知られています。
これに伴い、海水温の低下が起きています。
台風の通過に伴い、太陽光により温められる表層の海水が、比較的冷たい深層の海水とかき混ぜられることで、海水温が低くなるのです。
(※台風の通過前と通過後では、人肌でもはっきりと変化を感じ取れるくらいガラリと水温が下がります。)
このプロセスがサンゴにとってはとても大事なのです。
地球温暖化で海水温が上昇していることもありますが、異常高水温は台風が少ない年にも確認されています。
こちらは大規模白化が発生した2016年の「旬平均海面水温平年差」です。
九州・沖縄の広い範囲で赤色になっており、平年よりも海水温が高い状態が見受けられます。
この年は8月末までに2個しか台風が接近しておらず(2011年~2019年の平均は5.4個)、台風が少ない年と言えます。
2016年の石西礁湖(石垣島と西表島の間の海域)では、平均白化率が89.6%という報告(環境省, 2016)もあり、サンゴ礁は非常に大きなダメージを負いました。
※2016年は台風の接近が少ないことに加え、冬季から高水温の状態が続いていたため、大規模白化につながったとされています。
2020年の7月までは、海水温がやや高い傾向は認められますが、広い範囲での異常上昇はまだ見られていません。
しかし、このまま台風が少ない状態が続けば、海水温が高い状態が続くことになり、大規模白化が起きる可能性も十分にあります。
台風が少ないと災害の発生数も減りますが、こうした側面を考えると素直に喜べないことかもしれません。
なお、8月4日(火)午前9時の実況によると、台風4号は暴風域を伴っており、華中に上陸しています。
東シナ海では引き続き波高が3m前後の状態が続きます。
船舶では十分に注意して、安全な航行をお願いいたします。
文責:株式会社サーフレジェンド 気象予報士 塚本 陸