『梅雨到来!梅雨シーズンの天気の特徴と注意点は?』海快晴気象予報士のコラム vol. 3

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2022年6月6日(月)に、気象庁から「関東地方が梅雨入りしたと見られる」との発表がありました。
昨年より8日早く、平年より1日早い梅雨入りです。

6月15日(水)には東北南部と東北北部の梅雨入りも発表され、梅雨がないとされる北海道を除く全国で梅雨入りしました。

梅雨は大雨に伴う災害が発生しやすい時期になります。
「海快晴気象予報士のコラム」vol. 3では、梅雨と梅雨時期の注意点を解説していきます。


梅雨とは?実は曖昧な「梅雨入り」と「梅雨明け」の日付

気象庁は梅雨を「晩春から夏にかけて雨や曇りの日が多く現れる期間」と定義しており、季節が移り変わる中で現れる季節現象の1つとして捉えています。

梅雨入り・梅雨明けは平均で5日程度の移り変わりの期間があり、明確に線引きすることは困難です。
このため、梅雨入りと梅雨明けの日付は「~ごろ」と幅を持たせた表現になっています。

梅雨入り・梅雨明けの時期がはっきりせず、特定できなかった年もあるくらいです。

普段目にする梅雨入り・梅雨明けの日付は気象予測を元にした「速報値」です。
これとは別に、実際の天候経過を考慮して検討された「確定値」が毎年9月に発表されます。

「確定値」は「速報値」からずれ込むこともあります。
2021年の近畿地方と東海地方の梅雨入りの確定値は速報値よりも1ヵ月遅いものに変更されました。

梅雨入り・梅雨明けの確定値はこちら(気象庁HP)


梅雨前線が北上していないのに梅雨入り!?

「梅雨入り」といえば梅雨前線を思い浮かべる方も多いかと思いますが、梅雨入りの判断は「梅雨前線の位置」のみで行われているのではありません

梅雨前線の北上なども考慮しつつ、「雨や曇りの日が多く現れる」という中期的な気象予測から判断されています。
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梅雨入り後1週間の東京の天気予報(気象庁HPより)

2022年の関東の梅雨入り(速報値)は「雨や曇りの日が多くなる」という予測から判断されたものと考えられます。

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関東で梅雨入りが発表された日の天気図
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梅雨入り発表の翌日、関東から大きく南に離れた梅雨前線




梅雨時期の天気の特徴は?

梅雨前線は北上と南下を繰り返しながら、約3ヵ月かけて日本をゆっくり北上していきます。

前線の北側にある春の空気と南側にある夏の空気が陣取り合戦をやっているイメージです。
お互いが押し合いへし合いしているため、北上したり南下したりを繰り返します。

前線の南側に入れば夏の空気、北側に入れば春の空気に覆われるため、前線の位置で気温や天気が大きく変わります。

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前線の位置により大きく予報が変わってしまうことがあるため、予報の難しい時期とも言えます。

前線の位置に加えて、

・西から東に流れる気象変化は比較的予想しやすいが、南北に動く気象変化は予想が難しい
・(梅雨)前線は低気圧などよりも影響範囲が狭いため、予想が難しい

など、気象庁の予報官や民間の気象予報士泣かせの要素が盛りだくさんです。
(予報官や気象予報士がデタラメな仕事をしているのではなく、現代の予報技術の限界なのです…。)

数時間で予報が大きく変わることもありますので、この時期はこまめに予報を確認するようにしましょう。


梅雨の時期に気をつけたい現象

梅雨前線がもたらす大雨

梅雨前線は移動が遅い前線です。
前線が同じ場所で長時間停滞すれば、降水強度が極端に強くなくても総雨量は多くなります。

場合によっては土砂災害や低地の浸水に繋がることもありますので、「激しい雨(1時間に30ミリ以上)」や「非常に激しい雨(1時間に50ミリ以上)」でないからといって油断はできません。
昨年の7月に起きた伊豆の土砂災害は、前線が停滞して雨がダラダラと長時間続き、結果的に総雨量が多くなったケースだと考えられています。

このほか、梅雨の末期は夏の主役である太平洋高気圧が勢力を増し、梅雨前線に暖かく湿った空気を流し込むため大雨が降りやすくなります。


こんな時には要注意!
①台風が接近している場合

台風は南の海上から暖かく湿った空気を流し込みます。

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2021年6月の天気図(気象庁HPより)



前線に暖かく湿った空気が流れ込むと前線活動が活発化し、大雨をもたらします。
イメージとしては前線に燃料補給がされ続けている状態です。

梅雨に限らず台風と前線のセットは災害級の大雨をもたらすことが多いため、要注意な組み合わせといえるでしょう。


②前線上に小低気圧がある場合

梅雨前線には前線上に小低気圧が発生することがあります。

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前線上の小低気圧は急速に発達することはあまりありませんが、積乱雲の集団ができるため大雨をもたらします。
特に、南から暖かく湿った空気が流れ込む場合は要注意です。


③キンクがある場合

前線が北に凸になっている箇所をキンクといいます。

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予想天気図上で表現されたキンク

キンク周辺は渦ができやすいだけでなく、暖かく湿った空気が流れ込みやすい場所でもあります。
このような場所は前線活動が活発化しやすくなるため要注意です。


梅雨寒(つゆざむ)・梅雨冷え

「梅雨寒(つゆざむ)」は主に北日本~東日本の太平洋側の地域で、梅雨の時期に一時的に気温が下がる現象です。

北日本の海上にある高気圧(いわゆるオホーツク海高気圧)がもたらす北東気流が原因で、冷たく湿った空気が流れ込むことで気温が下がります。
季節が逆戻りしたように肌寒くなる日もありますので、服装選びに注意しましょう。
また、場所によっては北東風の影響を受けて波が上がるため、北東風を避けるようなポイント選びも大切です。

ちなみに、東日本に不順な天候をもたらす「やませ」はこの北東気流のことです。

竹内予報士の実釣レポートでも紹介されていますが、東日本では高気圧が北偏すると北東の風が吹きやすくなります。(高気圧周辺では等圧線に沿うように時計回りの気流が発生するため)

※実釣レポートはこちら→ その1 その2 その3 その4


海霧

梅雨寒に関連する現象ですが、冷たく湿った空気の影響で北日本~東日本の海上は海霧が発生しやすくなります。
海霧発生時は視程が悪くなりますので、船舶の航行時には特に注意が必要になります。

海上濃霧警報などが発表されていないか確認しましょう。
現在発表されている各種海上警報はこちら


気になる「線状降水帯」

2022年の6月1日より、気象庁による線状降水帯の発生予測が始まっています。

依然として線状降水帯は予測が難しい現象ですが、予測モデル開発の第一歩として、「九州北部」などのおおまかな地域(地方予報区単位)を対象に半日前からの情報提供が行われます。

詳しくは線状降水帯に関する各種情報(気象庁HP)をご確認ください。

周囲で大雨の可能性がある場合は、気象庁の発表する最新の情報に注意しましょう。


こまめな予報確認を

予報が変わりやすく外れやすいこの時期は、予報に対する信頼が薄れてしまうかもしれません。

しかし、予想が変わった際は必ず最新の予報に反映されます。
災害級の気象現象が予想される場合は、その内容が臨時で発表されることもあります。

予報が変わりやすい時期だからこそ、いつも以上にこまめな予報の確認をお願いいたします。

 
文責:株式会社サーフレジェンド 気象予報士 塚本 陸


海快晴気象予報士のコラム バックナンバー

『降水確率とは?上手に使って役立てよう!』海快晴気象予報士のコラム vol. 1
『風がわかれば海がわかる?風を知って海を楽しもう』海快晴気象予報士のコラム vol. 2


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