波伝説☆加藤です。先のコラムの中で、大地震発生時の記述について、大手エレベーター会社にお勤めになられるユーザーの方から、貴重なアドバイスを頂きましたのでご紹介させて頂きます。
ユーザーさまの結論から申し上げて、エレベーターを利用する方がそのエレベーターの仕様を把握することが重要になってきます。建物の建築年月日、エレベーターの仕様でかなり違いがあるようなので、ビルの管理室に地震時にはエレベーターがどうなるのかを、平時に確認されておくことをお勧めします。
(以下、ユーザーさまより)
いつも波伝説には大変お世話になっております。今回のコラムで自分の仕事であるエレベーターについて書かれていたので、メールしました。自分は昇降機のメンテナンスエンジニアとして、また部下の管理を仕事としております。加藤さんのおっしゃる通り、一般の方の地震時のエレベーターについての周知ってなかなかされてないですね。
ただ大きな地震があるとそれなりに報道はされています。2005年に発生した千葉県西部地震の際は関東で70件以上の閉じ込め事故が発生したと報道されました。また、昨年の震災時は復旧作業に本当に時間がかかりました。われわれエンジニアも家族や友人、または東北出身者もおり、津波の甚大な被害が報道がされ、家族の安否も確認出来ない状況で、ほぼ3日間復旧作業に走りまわりました。復旧作業中も余震で大きく揺れるビルでの作業は本当に恐怖を感じました……。
震災の時、自分の担当エリアは震度5強。最近のエレベーターは地震管制運転装置と言うものが設置されています。これは、地震を感知したら最寄階まで運転し、ドアを開いて休止となる装置です。しかし、この装置が設置されているのは全てのエレベーターではありません。
加藤さんの心配している閉じ込めが発生する可能性が高いのは停電です。停電でもバッテリーや自家発電で最寄階まで運転する付加仕様装置が設置されているエレベーターも最近は多くあります。1995年の阪神大震災、2005年の千葉、そして昨年の東日本大震災。その教訓から建築基準法もどんどん改定されています。
現在では、地震時の管制運転と停電時の自動着床装置の設置は義務化され、耐震構造についてもどんどん厳しくなってきています。最新のエレベーターは一旦停止するものの、自分で診断を行い異常ない状態であれば、自動的に運転を再開するところまで進化しています。エンジニアが足りないことを機械の強化と最新の技術で補う努力をしていかなければいけませんね。
また、経年エレベーターにおいては、現行法に適用しておりません。年に1回の定期検査で※既存不適格として行政には報告しますが、法違反ではありません。改善が望ましい……程度の表現なのです。
(※既存不適格とは、建築基準法が改正されて耐震基準が強化されたのは1981年で、それ以前に建てられた建物は、耐震性が弱く、既存不適格とされているが、現法では耐震補強が求められるものの努力目標であり強制力はない。加藤注)
エレベーターのリニューアルをビルオーナーに提案し、耐震や災害時の備えについてご理解頂くことが、自分達の使命だなぁと改めて感じました。つづく。