『1.17と初夢 Vol.3』

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翌朝、校舎から見下ろした神戸(長田)の街は、まだ数か所から煙が上がっていて、まるで爆撃を受けた後のような信じられない光景でした。その後に見た『週刊Friday』に掲載された、『焼け出された被災者(サーファー)が、サーフボードを抱えて呆然と街を歩く写真』は、日本中に衝撃をもたらせましたが、まさに悲惨な街の中で絶望感を背負い込んだ市民は、皆が同様な状況でした。

そのような中、日本全国から数十万人のボランティアが神戸に駆け付けて、災害救護や救援物資の運搬に携わり、さらに義援金や救援物資も半端でない額・量が届きました。極寒の1月半ばに、どん底に突き落とされた神戸市民をもっとも勇気づけたのは、隣人の励ましと共にこれらの日本国民の温かさでした。

私にとって忘れることのできない1.17ですが、ダイヤルQ2の仕事を1週間休んでも、その後に聞いていただいたリスナーがいらしたからこそ、サーフレジェンドはこの世に残り、さらに言えば、7年前にこだわりの波情報を貫くために年間6億円の収入を諦めて新生波伝説をゼロからスタートしても、再び応援いただいた多くのユーザーの皆さまがいらしたからこそ、今があります。私たちにとっては、万感の感謝の気持ちとともに、生涯忘れられることのできない、また決して忘れてはならない大きな出来事です。

一週間の活動を終えて、帰路の大阪で、2人の無事とささやかな打ち上げとして、ある庶民的なお好み焼き屋さんに入りました。おばちゃんに訳を話して、一週間水道が使えず一度も顔も手も洗えなかったので、せめて手だけでも洗わせてくださいと告げると、おばちゃんが『本当に御苦労さんでした。中に入って、調理場のお湯を使ってちょうだい』と言って頂きました。『ウヒャーお湯だぁ〜!!!』S君と笑顔でハシャぎましたが、その時に感じたお湯の温かさは生涯忘れることができません。
PS.おばちゃんへ、もちろんお好み焼きも美味しかったですよ!(笑)

その後神戸の被災地には、S君は大学の、私は出身のライフセービングクラブの有志を動員して、救援物資を持ち込みつつ、S君と波情報の仕事を交代しながら、もう一週間ずつ活動しました。被災地でのボランティア活動は、決して他人のためではなく、自分自身にとって重要かつ貴重な体験になります。

救護活動2回目の神戸市立御影小学校にて
救護活動2回目の神戸市立御影小学校にて
 
土木学会海岸工学部会などにおいて、今では数多くの学者が研究やその発表に活用している波浪予想システム「Wave Hunter」ですが、その開発責任者のトム・トレーシー君と、同システムを産学連携で研究している京都大学(防災研究所)の先生とは、今後の重要なミッションとして高潮の研究について相談しています。

地球温暖化により、水面上昇と台風の巨大化は、高潮と高波が同時に襲いかかる日本沿岸・島の住民にとっては差し迫った大きな脅威です。しかも、被害を防ぐための防波堤のかさ上げ工事や老朽化した堤防の改修工事には莫大な費用がかかり、現実的に緊急な対応は不可能です。

いまサーフレジェンドにできることは、いかに事前に的確に、どの程度の高波(高潮を含む)が、どの方向からどの地域に押し寄せてくるのかの研究です。365日休むことなく、日本全国で100人以上のサーフリポーター(目視で天候・風・波を観測)が行っているリポートや、海洋気象の予報精度の向上、そしてすべてのサービスの向上を疎かにすることなく、吹けば飛ぶようなちっぽけな海洋気象会社が、巨大台風の襲来前の的確な高波予想で、今まで支えてくださった皆さまや社会のお役に少しでも立てれば望外の喜びです。

2010年災害が発生することなく、京大との研究が順調に進む初夢が叶えられることを願ってやみません。(了)


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