9月16日(日)、伊豆大島から湘南茅ヶ崎までSUPで横断しようというプロジェクトが、毎年大島から茅ヶ崎までの泳断チャレンジを実施しているオーシャンアスリートの鈴木一也の呼びかけにより、実施されました。今回のチャンレンジには、鈴木一也に加え、プロウインドサーファーで全日本チャンピオンの経験を持ち、国内外でも活躍しているオーシャンアスリートとしても有名な釜口貴晴、永松良章、そして、茅ヶ崎でも常に鈴木とトレーニングを続けている森大二、鈴木敦士の計5名が参加しました。
海快晴の姉妹サイト波伝説(株式会社サーフレジェンド)はオフィシャル気象情報として今回のプロジェクトをサポートさせていただきましたが、数日前にフィリピンの東海上で発生し、その後勢力を強め、大型で猛烈な勢力にまで発達した台風16号からのうねりが心配され、さらには台風の北上によっては南東〜南寄りの風が強まり、非常にタフなチャレンジとなることが予想されていました。
当日は、北東寄りの風が吹き続け、東海上の高気圧の吹き出しによる東〜南東寄りのうねりが続き、台風からの南寄りのうねりも入ってくることが予想されていました。また、天気も晴れていたものの南海上には発達した雷雲が北上してきていて、雷の心配もありましたが、計画通り注意して漕き、いざというときのサポート船への避難も覚悟のうえ、後半の南東寄りの風によるダウンウインドに期待し、当初予定されていた午前6時よりは1時間遅らせたものの、午前7時20分にはスタートしました。
写真3
ただし、漕ぎ出してからすぐに、大島周辺の強い潮の流れと、向かい風となる北東寄りの風の影響を受けはじめていました。その後、北東寄りの風は予想よりも長く吹き続け、また、東〜南東寄りのうねりと、西へ向かう時速約3ノット以上という強い潮の流れにより3時間たってもわずか7kmという距離でした。しかも、風は北東、うねりも東〜南東寄りということで、当初は西へ流されてしまう心配もありながらも、実際に進んでいく方向は大島から東北東方向で、今回、サポート船を引き受けていただいた漁船の船長の言うとおり、このままでは千葉県の館山方向へ進んでしまう、という不安がよぎっていました。
5時間たってもわずか15km。約60kmという総合距離には程遠い走行距離です。しかも西へ流されているので実際にはもっと長い距離となることが予想されます。強い潮の流れと風や、風波、うねりが複雑にぶつかり合い、台風からのうねりも加わり、四方八方から入ってくるうねりにメンバーたちはみんな手こずっていました。
写真5 釜口貴晴
その後、7時間たっても約22kmというところで、まだ残りを考えると、日没までの到着は難しいという判断の元、今回のチャレンジは中止と判断され、漁船で茅ヶ崎漁港へ向かいました。
メンバーたちは、今回のチャレンジを終え、悔しいという気持ちが大きいのかと思いきや、その反対で、今回のチャレンジを通して、大海原のことをまたひとつ勉強できたことの喜びの方が大きいのか、爽快感や笑顔だけが残っていたようです。大自然の素晴らしさや楽しさ、怖さ、奥深さなど、全てをまた体で感じることができ、そうした中で、生きていることの喜びをまた覚え、自分自身を知る事もできたのかもしれません。チャレンジとは、自然に挑戦し、自然を克服することではなく、自然の中に自分がどこまで溶け込み、どこまで自然を吸収し、また新たな一面を勉強することができるのかどうか、ということなのかもしれません。
次回のチャレンジはまだわかりませんが、メンバーたちは全員、またこの海へ戻ってくることを約束したに違いありません。そのときまで、さらに彼らは大きくなってチャレンジしてくれることを期待したいと思います。
写真6 鈴木一也
※あれだけタフなチャレンジだったにも関わらず、次の日には、彼らの一部は、台風からのうねりを堪能していました。さすがです。
小川予報士