☆加藤のコラム【再生可能エネルギーへシフトする!!vol.1】

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 このコラムを読んで、きっと不快感を抱く電力関係者がいらっしゃることと思います。歴史を振り返れば、関西の電力量を増やして安定化させるために、幾多の困難を乗り越えて建設された黒部ダムの関係者の感動の物語や、東京オリンピック、その後の日本の高度成長を支えてきたのは、紛れもなく安定供給して頂いた優秀な電力会社の尽力があったからこそです。国民の電力会社への信頼は絶大であり、停電することは稀であり、仮に落雷などで停電しても24時間体制ですぐに復旧させてしまう頼もしい存在です。そのことを踏まえて、再生可能エネルギーへシフトするコラムを書かせて頂いたことを、予めご承知いただき、最後までお付き合いください。

 ソフトバンクの孫正義社長らが推進している休耕田を活用したメガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設や、パナソニック社などが藤沢市の自社工場跡地に建設予定のエコタウン計画(すべての施設に太陽光発電・蓄電池を設置)に心から賛同します。また、日本の立地条件を考えると、比較的発電コストが安くて安定供給が可能な地熱発電所(写真1参照)の建設(殆どの最適な建設場所が国立公園内のために法律規制がかかるが、法律を改正して景観や立地に配慮しつつ建設可能とする)や、風力と波浪を兼ね備えた洋上発電所の建設を推進し、総合的に脱原発へのエネルギー政策に針路を向けるべきと強く考えます。

岩手県八幡平市の松川地熱発電所 Photo by Si-take.
岩手県八幡平市の松川地熱発電所
Photo by Si-take.


 以前に少し紹介しましたが、北欧の小国デンマークでは、1970年代の2度のオイルショックを契機として、エネルギー政策を抜本的に転換しました。石油の安定供給と、価格リスクの高い輸入石油からの脱却を図るために、コストのかかる北海油田の採掘に着手するとともに、風力やバイオマスなどの再生可能エネルギーによる発電を積極的に推進してきました。このため、1997年にはエネルギーの完全自給化を達成し、2006年には141%のエネルギー輸出国に変身するだけでなく、再生可能エネルギーによる発電の割合を26%まで高めたことが注目に値します。

デンマークの洋上風力発電
デンマークの洋上風力発電


 デンマーク近海は、水深の浅い大陸棚に恵まれ、また大陸の西側に位置する安定した風力を生かして、洋上風力発電を積極的に推進してきました。(写真2参照)現在では、イギリスが洋上発電に力を入れていて、ヨーロッパのイギリス以外の合計よりも洋上風力発電量が多くなったそうです。きっと来年開催されるロンドンオリンピックでは、ヨット種目などで、洋上風力発電風景がきっと紹介されると思います。

デンマークの農地にある風力発電
デンマークの農地にある風力発電


 デンマークに話を戻して、同国の農家では、自らの農地の上空を活用して風力発電を大量に設置してきました。(写真3参照)政府も積極的に支援し、エネルギー政策と組み合わせた農業政策は、ぜひ日本も見習うべきです。さらに、酪農家には、家畜の糞尿や有機廃棄物を活用したバイオマスガスによる発電も促してきました。戦後の日本では、農業収入が増えて農業後継者や希望者が増えるような政策が打てず、農業従事者が減少してきたのに対して、デンマークでは風力発電までも活用して農家・農業を支え、現在のカロリーベースの食料自給率は300%まで高めているのです。日本の自給率は、10年以上も40%から増えていません。さらにデンマークでは、その再生自然エネルギー政策が、風力やバイオマス発電に関わる研究を促し、技術力を高めて、設備を作る関係企業を世界最先端の大企業へと発展させてきたのです。2010年の1人あたりの名目GDP(国内総生産)は、デンマークが5位で日本は16位です。もうお見事というほかない、政府主導によるエネルギー政策転換の成功例です。つづく。

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