セール フォー ゴールド レガッタ:ワールドカップ 第6戦大会報告
編集:オリ特 広報委員会
ロンドン五輪開幕まであと55日という中で、セーリング日本代表チーム(6種目・9名)は先月24日の五輪記者会見を終え、急ぎ足で欧州に戻り、4日から始まる五輪に向けて最後の強化国際大会「スカンディア・セール・フォー・ゴールド・レガッタ」に参戦しました。
開催地の英国・ウェーマスはご存じのとおり五輪セーリング競技大会会場です。ISAF(国際 セーリング連盟)のワールドカップ第6戦を兼ねる本大会は文字通り本番レース前哨戦として各国五輪代表の実力を計る上でも重要な「試合」となり、大会本部の発表では59か国、523艇、723選手の参加規模となっていました。
大会が始まると、初日は北寄りの微風の中でのレースとなりましたが、その後は、前線や低気圧の影響で徐々に風が強まり、4日目と5日目については、40ノットオーバーという超強風で大波も加わり、結局5日目はどの種目もノーレースとなりました。
海面の様子
日本代表チームは結局トップ10に残ることができず、最終日のメダルレースに参加できないまま今大会を終えることとなってしまいました。
大会までの忙しいスケジュールの中でうまく調整することができず、残念ながら日本チームはメダルレースに進出することができず、1日中、待ちぼうけとなってしまった選手には終わった実感がありません。セーリングは自然条件に左右される競技ゆえにこれもしかたがないのですが、決勝ラウンド最終日に当地でも珍しい「大荒れ」に遭遇したのは不運でした。
日本代表チームは今後は3日間の間を取り、12日(水)から五輪ハーバーの向かいにあるキャッスル コーブセーリングクラブ(CCSC)にて10日間の第1次強化合宿を行います。選手たちは問題点の修正、本番に向けての細かい乗り方、チューニング等 に集中します。この合宿には原田・吉田組と最後まで五輪代表を争った松永鉄也・今村公彦組(スリーボンド)が470級のセーリングパートナーとして参加し ます。またレーザーラジアル級代表土居愛実の練習パートナーを帯同している飯島洋一コーチ(北京五輪代表)がつとめます。
大会公式サイト:http://www.skandiasailforgoldregatta.co.uk/
成績:http://www.skandiasailforgoldregatta.co.uk/results/index12.html
オリ特・ロンドン五輪情報ページ:http://jsaf-osc.jp/cn08/pg04-02.html
【種目別 成績】
(補足:全クラスとも5レース以上を消化したため最悪順位が1レースカットとなります)
◆470級男子・・27か国 45艇
22位 原田龍之介・吉田雄悟組(アビームコンサルティング)
(20)-7-13-14-10-12-4-16
◆470級女子・・24か国 32艇
12位 近藤 愛・田畑和歌子組(アビームコンサルティング)
22-6-10-7-3-19-(24)-6
◆49er級・・21か国 38艇
22位 牧野幸雄・高橋賢次組(関東自動車工業)
11-5-7-12-(BFD)-3-7-12-12-20
◆レーザーラジアル級・・38か国 70艇
46位 土居愛実(慶應義塾大学)
20-15-20-(24)-24-19
◆RS:X級男子・・39か国 58艇
16位 富澤 慎(関東自動車工業)
11-13-26-(31)-15-13-21-17
◆RS:X級女子・・28か国 43艇
19位 須長由季(ミキハウス)
(29)-19-27-19-5-21-11
【総括:中村健次NC・日本代表監督】
今大会での結果は選手によって手応えの捉え方が違っていましたが、ロンドン五輪に向けて、それぞれの課題の抽出ができた大会だったと思います。5月の各クラス世界選手権(代表選考大会)が終了し、慌ただしく今大会に参加したことでペースが掴めきれず、それが結果に直結した部分もあるかもしれませんが、率直に言って、もともとの課題が克服できていなかったことやスタートの良し悪しが成績に反映していた事実、はたまた凡ミスをしたことで順位を落としてしまうケースがありました。いずれにしても本番前のこの時期に改めて問題点を明確にできたことは選手たちの気持ちの切り替えにも大きなプラスになります。
12日から始まる第1次強化合宿で取り組むべきテーマも鮮明になりました。その課題を確実にクリアすることが五輪本番の結果に直結します。他国チームは大会終了とともに母国に戻りますが、我々日本チームはこのウェーマスの海面に慣れる(ホームゲームの様に)ことで「勝利に近づける」と確信しています。
【種目別最終総合成績と選手のコメント:課題と抱負】
◆470級男子・・27か国 45艇
22位 原田龍之介・吉田雄悟組(アビームコンサルティング)
原田「課題はスタートとボートスピードです。世界選手権の走りがリセットボタンを押したみたいに途切れてしまい、しっかり走れている感覚が今回はなかったので、まずその感覚を取り戻します。2、3日の乗り込みで戻せると思います。そこからボートスピードをアップウィンド、ダウンウィンドともにあげていくようにします」
吉田「スタートが悪かったので早めにラインに並ぶ、風を判断する場所を決めるなど、一連の流れを取り戻したいと考えています。大会の慌ただしい中で何度かはできていましたが、スタートが良ければ十分戦えるので、そこを確実にしたいと思います。13日に新艇が届くのでその調整をして、本番準備にしっかり取り組みます」
◆470級女子・・24か国 32艇
12位 近藤 愛・田畑和歌子組(アビームコンサルティング)
近藤「大会前にバタバタしたままレースが始まり、落ち着きがありませんでした。人の出入りが多かったのがいつもと異なる点で、自分も様々な情報がほしかったので対応しましたが、その流れの中でペースがつかめませんでした。集中しようとしたけれどうまくいかなかった感じです。落ち着いて生活のリズムを作って、情報を整理してからレースをするように本番へ向けて準備をしていきます」
田畑「今回は凡ミスが多かったです。大会の4〜5日前に現地入りしたのですが、艇の修理やコンテナ到着とか、意外と練習できる時間が少なく、リズムが作れないままレースに入りました。でも、レース中には新たによい点も見つかったし改善点も見えてきました。コンテナから下した新艇は日本で乗った時にすごくいいフィーリングだったので、事前合宿では本番に向けて艇の準備から、しっかり乗り込みたいと思います」
470級女子チーム
◆49er級・・21か国 38艇
22位 牧野幸雄・高橋賢次組(関東自動車工業
牧野「国別順位で15-16位、少しずつですが我々も力が上がってきています。課題が明確になってきたので、効率よく練習を組んでひとつでも多く克服していきたいと思っています。強風でも戦えるようになってきたので、ボートハンドリングと2艇を使ってのスピードアップで、合宿は基本、基本、また基本の練習に明け暮れると思います」
高橋「細かいところで他国チームにやられてしまっています。僅かな差なのですがその積み上げで上位に届かない。そこをなんとしてもつめていきたいです。今回は上位陣が五輪代表以外の英国選手も含めて勢揃いした大会で、世界選手権よりも上位選手が多い中で手応えのあるレースができました。本番でいいレースできるように28日までここで頑張って乗り込みます」
◆レーザーラジアル級・・38か国 70艇
46位 土居愛実(慶應義塾大学)
土居「6レースしかできなかったので、物足りない大会でした。スタートから1上マークまではトップ10で走れることができたので、合宿ではダウンウィンドの走りを磨くことに集中して練習します」
◆RS:X級男子・・39か国 58艇
16位 富澤 慎(関東自動車工業)
富澤「ウェーマスの風が少し理解できた気がします。今回は迷わず思い切ってよいと思うサイドへ行ってみたので失敗もありましたが、まさにこのコースだという手応えもありました。合宿では更にコースの取り方を追求していきたいと思います。RS:X級は本番で全艇チャーター(支給艇)なので、受け取ってから短い時間で自分のものにしなければなりません。自分は道具をもらって合わせていくのは、どちらかというと得意なほうです。本番は道具の勝負ではなく、ウィンドサーフィン力の戦いだと思っています」
◆RS:X級女子・・28か国 43艇
19位 須長由季(ミキハウス)
須長「4月にフランスのイエールでスタートが改善され、5月には日本にトレーニングパートナーをよんでスピードアップや基本動作に取り組みました。今回ウェーマスではその成果を出したかったのですが、5月後半に腰を痛めてほとんど海に出られない状態が続き、久々のレースで初日はあせってしまいました。3日目くらいから大きくコースもとれるようになり、プレーニングコンディションのスタートも克服できてきたので、さあこれからと思ったら吹きすぎでレースができなかったのが残念でした。これから本番へ向けては、合宿の中で毎日1時間は基本動作の反復練習を入れて課題を克服、他国の選手がでてきたらコース練習でとくにスタートを強化していきたいと思っています」
(参考)
【世界セーリング連盟5月末発表の世界ランキング】
470級男子
原田・吉田組 13位
470級女子
近藤・田畑組 1位
49er級
牧野・高橋組 22位
レーザーラジアル級
土居 133位
RS:X級男子
富澤 30位
RS:X級女子
須長 30位
【帯同の国立スポーツ科学センター(JISS)マルチ・サポート事業チームの活動内容】
(1)風調査
5艇のインフレータブルボートで今大会のレース海面(五輪セーリング競技会場)ウェーマス沖海面の風データを収集し、レーストラッキングデータとともに解析。期間中は毎朝、海面の風傾向や前日の解析結果などを選手へフィードバックし、選手はその日のレース戦略を立てる情報として活用しました。
(2)コンディショニング
毎朝、選手の心拍数、体重、体温、主観的疲労度などをチェックし、その日のコンディションを選手やコーチにフィードバック。選手は毎日の体調を把握しレース中のコンディショニング管理を行いました。
(3)栄養管理
期間中2名の管理栄養士により日本チーム全選手の栄養管理を行いました。五輪本番に向けて増量・減量を行っている選手には特別メニューで対応、万全の体調管理を行いました。
(4)大会情報提供
情報管理アプリ「Handbook」に、レース公示、帆走指示書、スケジュール等の大会公示、チーム連絡事項などを随時掲載し、チーム間の円滑なコミュニケーションをはかりました。