London 2012 Test Event 470級女子の近藤 愛・田畑 和歌子組が金メダル獲得の快挙

 8月4日から英国・ウェイマスの2012ロンドン五輪ヨットハーバー(ポートランド)にて開催されていたセーリング競技のプレ五輪大会は,現地時間12日に大会最終日を迎え、男女470級(男子33か国33艇、女子26か国26艇参加)の予選シリーズ10位までのファイナリストのみが出場できる決勝・メダルレースが行われた。



 予選シリーズ2位で決勝に進んだ近藤 愛・田畑和歌子組(アビームコンサルティング)は、1点差で予選首位の英国チームと「先着したほうが金メダル」という文字通りの一騎打ちの戦いとなった。近藤組はスタートから終始英国艇をリードするなど冷静かつ巧みなレース運びを見せ、ニュージーランド艇に次ぐ2位でフィニッシュ。英国艇は4位に沈み、近藤組は堂々の逆転総合優勝、宿願の金メダル獲得という快挙を達成した。



 近藤組は強風を得意とするチームで、予選シリーズも後半の強風戦で本領を発揮、得点で英国艇に追いつき、最後の最後に逆転勝利をものにした。



 予選シリーズを7位として同じく決勝に進んだ男子の松永鉄也・今村公彦組(スリーボンド)は、上位3チームとは得点差がありメダル獲得は厳しい状態のなか、上位入賞をめざし決勝に臨んだ。決勝では中盤まで後位に位置していたが、最後の周回コースで奮起、3艇を抜いて5位でフィニッシュ。メダルには届かなかったが大健闘のすえ総合4位を獲得した。



 来年のロンドン五輪に向けて日本セーリングチームの470級は男女とも「メダル獲得」を目指している。まだ1年先とはいえ、五輪は同じ時期に同じ海面で行われるため、今大会の470級勢の活躍は、五輪本番での期待をさらに高めるものになった。



ロンドン・プレ五輪大会最終日

8月12日8正午の気温18.1°西風8〜12ノット)



 いよいよ470級男女の決戦、メダルレースの日となった。今日のポートランドマリーナは曇天。風も昨日とは打って変って軽風が吹いていた。



 海面の風は9ノット235°。時折左からブローが入るが、波もなくフラットな状態。上マークまでの距離も短く、またスタート海面でのコーチボートの動きも規制が厳しく、決勝レースの緊張感が伝わってくる。陸地では日の丸を掲げたチームジャパンの選手、スタッフが応援にかけつけた。レースは女子が先のスタート。日英の2艇はスタート前からマッチレース状態。勝った方が金メダル、英国艇が近藤組を執拗に追いかける。



 スタート。近藤組は即右海面に、英国艇はそのまま左へと分かれ、1上マークは近藤組がスペインに続いて2番手で回航。3位は英国。風は12ノットでガストが入り始め、風向も左に振れ215°。2上マークも変わらず。2下マークでは英国艇が追い上げて近藤艇とはハナの差となった。



 3上マークは近藤組が2番をキープ。英国は遅れて5番。近藤組は落ち着いて自分たちのレースを展開している。最終レグ、金メダルが近づいてきた。ニュージーランド艇がトップでフィニッシュ。続いて近藤組がフィニッシュ。英国を破り、逆転優勝の快挙で金メダルを獲得した。ガッツポーズの近藤・田畑の二人は満面の笑みで嬉しさがこぼれるばかり。見事な勝負に関係者全員が脱帽、本当に素晴らしいレースを見せてくれた。



 女子レースの興奮も冷めやらぬまま、続いて男子・松永組のメダルレースが始まった。松永組は本部船寄りからやや苦しいスタートで即タック。近藤組と同じコースをヒタヒタと走る。1上マーク5番回航。1下は10艇の大接戦。1下同じく5番。その後2上6番、そして最終3上では8番まで落ちてしまった。



 最終レグ、松永組は右海面に1艇のみ伸ばし始めた。このあたりが松永の面目躍如、まさにこのコースの読みがズバリ当たり、フィニッシュ直前のつば競り合いでなんと3艇を抜き去り、驚異の5位フィニッシュ。総合4位にジャンプアップした。優勝は別格のフランス、2位はオーストラリア、3位はイスラエル。大健闘の大殊勲の松永・今村組だった。



◆金ダリスト近藤愛選手のコメント



「ヨーロッパ遠征の最後をよい形で終えることができて大変うれしく思っています。チームの最大の励みになりました。サポートしてくれた関係者に感謝します。強風の自信もついたので本番に向けて油断せずに練習を積み重ねていきます」



◆小松一憲コーチのコメント



「今年はG1レースでは2回(オランダ、スペイン)ほど表彰台に上がったがすべて2位だった。今回は表彰台のセンターに上がれて今年の締めくくりのレースとしてベストの結果で終われてよかった。一番高い所に登れば当然次に見えてくるものがある。近藤たちも自信になっただろう。ただ、厳しい言い方かもしれないが、今回はテストイベントであったので、ある種各国ともリサーチの側面もあるので、これで安心してはいけない。これを励みにして今まで以上に頑張ることが必要だ。北京五輪の時の前年と本番の例もある。よかった所、悪かった所を解析して次につなげなければとあらためて思っている」



◆総合4位入賞の松永鉄也選手のコメント



「ヨーロッパ遠征の締めくくりの大会を無事終えることができてほっとしています。4位を取れたことは幸いでしたが、いつもながらタラレバの部分など反省点は多々あります。強い気持を持って、安定して上位を走れるようこれからも腕を磨いていきます」



◆中村健次ナショナルコーチの総括コメント



「結果が全て!!女子で優勝した近藤・田畑、総合4位になった松永・今村は良く頑張ったと思います。しかし、ボートスピードや体力的部分、ダウンウインドでのテクニックがまだ劣っています。今後、先ずは良い所を伸ばし、悪い所を改善する時間が必要だと思います。2チームは2012年ロンドン五輪に向けた新たな出発だと思います。多方面の仲間、マルチサポート事業などの手厚い支援を受け、更なる金メダルに向け約束を誓った1日でした。まさに身が引き締まる思いです」



◆49er級牧野幸雄選手のコメント



「練習を積めば勝てると思います。チームを組んでからまだ2年。出場国では一番浅いはずです。そうした意味で伸びシロは一番あるかもしれません。ウェイマスには4大会来ています。イメージも持てたし、手応えはつかんでいます。今回の成績についてはメダルレースに出たいと叶いませんでした。ラップ数も多くて体力的には問題ありませんでしたが、強風下の49erのコントロールが足りなかったことを痛感しています。秋には新艇が到着しますので練習を積んでワールド、ISAFワールドで全力を尽くしたいと思っています」



◆関一人コーチの総括



「練習不足、経験不足、調整不足、締めくくりのレースとしてはアプローチの段階から足りないことだらけでした。選手も不完全燃焼だと思います。ですが、本年のレースで一番課題が明確になった大会であり、私達にとって有意義な大会であったと言えます。この悔しい気持ちをオリンピックまで忘れず、470級のように日の丸を掲げることができるよう、全力で前を見て進んでいきます」



■日本代表選手最終成績

◆RS:X級男子(34か国34艇)

総合22位 富澤慎(関東自動車工業)16-27-27-21-21-(28)-16-24-17-24



◆RS:X級女子(28か国28艇)

総合22位 須長由季(ミキハウス)22-21-24-24-(27)-21-16-15-6-26



◆レーザー級男子(56か国56艇)

総合29位 安田真之助(鹿屋体育大学)34-25-33-33-29-32-(50)-11-25-25



◆レーザーラジアル級女子(49か国49艇)

総合30位 蛭田香名子(豊田自動織機)(46)-42-31-19-29-26-35-36-25-20



◆470級男子(32艇32か国))

総合4位 松永鉄也・今村公彦(スリーボンド)1-9-9-5-6-7-(33bfd)-12-7-15-MR・5



◆470級女子(26艇26か国)

優勝 近藤愛・田畑和歌子(アビームコンサルティング)(16)-5-1-13-1-4-3-5-3-3-MR・2



◆49er級(24か国24艇)

16位 牧野幸雄・高橋賢次(関東自動車工業)13-14-17-(ocs25)-18-10-4-12-12-18-17rdg14.5-rdg14.5-15-16



レポート/オリンピック特別委員会広報

写真/オリンピック特別委員会広報、帯同各コーチ、中嶋一成



日本セーリング連盟(JSAF)

http://www.jsaf.or.jp/



JSAF オリンピック特別委員会

http://jsaf-osc.jp/

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