『掛川チャンピオンシップ』レポート

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 12月7日(土)〜8日(日)にかけて、静岡県掛川市菊川ポイントにて、プロアマウインドサーフィンの大会が開催されましたので、そのレポートをさせていただきます。

メーンボード
メーンボード




 7日(土)は、前日からの上空の寒気が南下した状態が続き、冬型の気圧配置も緩みつつも続いていましたので、朝の時点では風は弱かったものの、すでに沖合では西寄りの風が強まってきていて、白波も見えていました。

 その後、午前9時ころになると沿岸でも西寄りの風が強まりはじめ、今後もさらに風が強まってくることが予想され、また、翌日8日(日)には風が吹くかどうかまだ微妙ということもありましたので、スラロームとウェイブの2種目をできる限りやってしまおう、というレース委員会とウェイブ委員会との方針のもと、まずはどちらから始めるかという中で、波がまだあまりなかったので、まずはメンズのスラローム第1レースからスタートすることとなりました。

写真:レース前の様子

 スラロームのヒートがスタートするころには西寄りの風が10m/s程度まで上がってきていて、順調にヒートが消化されていきました。そうした中で、目を見張ったのは、まずは、三浦海岸をホームゲレンデとして、地元でのレース活動で多くのレーサーとともに活躍している山田昭彦選手や国枝信哉選手で、風が強く、まとまりがない風波の中でも安定した走りを見せていました。

 さらに目を見張ったのは、やはり昨年もスラロームとウェイブの2種目を制覇して御前崎をホームゲレンデとして、最近ではスピードトライアルにも力を入れている浅野則夫選手で、彼はスタート直後からの急速な加速で後続をすぐに引き離し、完璧なレース展開を見せていました。

 関西代表の駒井友彦選手もさずがは元ウェイブの選手という経験を生かし、まとまりがない風波の中でも安定した走りでヒートを勝ち上がり、海外での経験も豊富な”コング”こと鈴木智彦選手も、記録用の動画カメラを装着してのレースにも関わらず、安定してヒートを勝ち上がっていました。

スラロームスタート
スラロームスタート


写真:スラロームスタート2

 メンズの第1レースのファイナルが行われる前に、レディースのヒートも行われ、レディースのスラローム第1レースを制したのは、荒れた風波をもろともせず、逗子をホームゲレンデとして、毎年この大会には必ずエントリーしている永田理香選手でした。

 また、それに次いで速かったのは地元御前崎をホームとする佐藤素子選手。彼女もウェイブでは圧倒的な強さを見えているだけに、こうしたコンディションのスラロームでも安定していました。

 その後、メンズのファイナルが行われ、そうそうたるメンバーの中、まずは制したのはやはり圧倒的な強さを見せた浅野選手で、2位に国枝選手、3位に山田選手と続いていました。

マーク回航
マーク回航


 次に、多少のインターバルを挟んで、すぐに波が徐々に上がってきていたことを確認して、ウェイブパフォーマンスのヒートがスタートしました。その頃にはすでに12〜13m/s以上の西寄りの風が吹いていて、さらにジャンクとなっていましたが、インサイドにはたまに腰〜腹程度の波も入ってきていました。

 ただし、うねりではなく風波なので、波乗りには多少物足りないコンディションとなっていましたので、ジャンプ、もしくはウェイブのどちらかを選んで3本まとめて点数を加算するという方式がとられていました。

 今回は、スラロームとダブルエントリーしている選手も多くいたので、スラロームでの疲れもとれないままにウェイブのヒートに挑んでいた選手もいました。そうした中で、ジャンプで高い点数を見せていたのは、この日スラローム第1レースを制している浅野選手。彼はショルダーが張ってくる波が少ない中でもより高くジャンプできる波を選んで完成度の高いバックループなどを披露していました。

 また、同じくプッシュループなどで会場を盛り上げていた野口貴史選手。彼はやはり御前崎をホームゲレンデとして活躍し、11月にはハワイで開催された伝統あるアロハクラシックにも参戦し、海外での試合にも挑んで良い刺激を受けてきていたので、その余韻もあるのか、試合前のウォーミングアップでは、誰よりも海に長く入り、その日のコンディションを完全に自分のものにしていたように見えていました。

 あと、今回特に印象が残ったのは、ベテランの浅野選手や野口選手、そしてやはり御前崎をホームとしている福島英彦選手に対して、若い力を発揮していた若手のホープ2名で、ひとりは先の三浦海岸で開催されたPIZZA-LA KUA’AINA CUP 2013のフリースタイルで優勝した小林悠馬選手で、彼はひとりシャカやバックシャカなど、フリースタイルとウェイブを融合した技で会場の眼を虜にして盛り上げていました。

 もう一人は、オリンピックに焦点をあて、最近はウェイブの練習はほとんどできていないというカントリーハーバー所属の板庇雄馬選手。ただし、彼もそんな練習不足を感じさせないようなフォワードループやバックループ、プッシュループなどを披露し、その完成度も低くはなかったです。

 予想通り、セミファイナルに残ったのは浅野選手対板庇選手、そして、野口選手対小林選手でした。それぞれに完成度が高く、ジャンプもさることながら、たまに入ってくる形の良いショルダーの張った波を選べばウェイブライディングでも点数を稼いでいました。


 そんな4名の中、ファイナルへ進んだのは浅野選手と小林選手。野口選手と板庇選手は惜しくもファイナルへは進めませんでしたが、3位決定戦へと駒を進めていました。





 メンズのファイナルが行われる前にはレディースのウェイブが行われました。でも、レディースといえども、それはメンズに劣らないジャンプやウェイブライディングを披露し、そのレベルの高さには目を疑いました。ファイナルへ進んだのは、スラロームでも大活躍した佐藤素子選手をはじめ、西田和佳選手、田中美帆選手、森美奈子選手で、最終的にレディースのウェイブを制したのは、昨年も優勝している佐藤素子選手でした。

 メンズのファイナルでは、ベテランで圧倒的な強さを見せていた浅野選手に対して、小林選手も若いエネルギー全開で挑んでいましたが、結局、安定したジャンプとウェイブライディングでトータル的にポイントを稼いだ浅野選手がウェイブを制していました。

 風は多少弱まりつつも西寄りの強い風が吹き続けていましたので、スラローム第2レースが次に始まりました。

写真:スラロームスタート3
写真:スラロームスタート3



 ここでも、やはり圧倒的な強さを見せていたのは浅野選手で、それに次いで国枝選手、鈴木選手、駒井選手、山田選手などがファイナルへ進み、インサイドマークのところはちょうどウェイブポイントにもなっているピークがあり、潮も引いていたのでブレイクにもパワーが出てきていて、うまくその波をかわして安定してマーク回航をした選手が上位に進む結果となっていました。

 ファイナルでも安定した走りで第2レースを制したのは、やはり浅野選手で、彼はこの日、西寄りの強い風・波の中でのスラローム2レースとウェイブのファイナルヒートまでを全て完璧にこなし、圧倒的な強さを見せていました。大会直後には、さすがの彼もその疲れを見せていましたが、次の日にはまた試合に挑むだけの気合いは感じられました。

 次の日は、上空の寒気は残っていたものの冬型の気圧配置は緩み、西から高気圧に覆われていました。東側の伊豆や大島、三浦方面では、北北東の風が強く吹き、西側の浜名湖方面では北北西の風が強く吹いていて、ちょうど真ん中にあたる菊川ポイントではそれらの風がぶつかっていたのか、ほとんど風が吹いていない状態で、結局この日の試合は難しいと判断され、午後1時ころには表彰式が行われました。

 今回、スラロームとウェイブの2種目を制した浅野選手は、昨年も2種目を完全制覇し、見事に2連覇です。しかも彼の過去のウェイブでの成績はさることながら、スラロームにおける年間ランキング1位は、2001年から数えると2003年〜2005年の3年を除いて2012年まで累計9回で、しかも2006年から7年連続となっていて、今年もその可能性は十分にあります。彼の強さはどこまでも続く可能性を秘めていて、それを追う若手がいつ彼を脅かす存在になるのかが、非常に楽しみです。

ウェイブメンズ
ウェイブメンズ


スラロームメンズ
スラロームメンズ



 詳しい大会リザルト、ヒート表などは以下をご覧ください。

http://jw-a.org

 今回は、寒気が南下していたものの、比較的暖かく感じ、風も思ったよりもドン吹きとはならなかったのですが、それなりに2種目成立するだけの風が吹いて、無事大会を終えられることができ、とても良かったと思います。来年はさらに良い大会となりますよう願っています。

 選手の皆様はもちろん、関係者の皆様、本当にお疲れ様でした。



小川予報士

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