大島OC1横断チャレンジ決行!

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 先日、11月18日(日)に、湘南・茅ヶ崎〜大島までをOC1(一人乗り用アウトリガーカヌー)にて横断しようする計画が決行されました。

 これは、毎年、大島〜茅ヶ崎泳断チャレンジを決行し、さらには昨年には日本の復興や日本と台湾との関係をより親密にすることを目的とした日本〜台湾黒潮泳断チャンレジを成功させ、今年の夏には、大島から茅ヶ崎までをSUPで横断しようとしたものの、残念ながら強い潮の流れに阻まれ、途中やむなく断念したなど、数々の壮大なプロジェクトの発起人でもある、オーシャンアスリートの鈴木一也氏が提案したものです。

 また、今回のプロジェクトへ参加したパドラーは、このプロジェクト発起人である鈴木一也をはじめ、茅ヶ崎アウトリガーカヌークラブ代表の塩澤正光、前回のSUP横断チャレンジにも参加した森大二、そして鈴木敦士、石井健太、鈴木功士の計6名です。彼らは、もともとスイマーやライフセーバーでありながらも、日々のパドルトレーニングを続けている強靭な肉体の持ち主であり、もちろん海を知り尽くした愉快なオーシャンアスリートたちの集まりです。

愉快なオーシャンアスリート
愉快なオーシャンアスリート


 前日となる17日(土)は、湘南では、気圧の谷の接近・通過に伴って前夜から南〜南西風が強く吹き続け、朝から雨も降り交じるスーパージャンクなコンディションとなっていました。さらに夜になると低気圧から伸びる前線が近づいた影響でさらに風・雨が強まり、ストーミーなコンディションとなっていました。ただし、横断が決行される次の日には気圧の谷が抜け、強い冬型の気圧配置となり、相模湾沖では西寄りの風が強まりますが、相模湾内では北西〜北東風が多少強まるものの、波は徐々に落ち着いてくるという予報に基づいて、このプロジェクトの決行に臨みました。

 さて、当日の朝には、予想どおり北寄りの弱い風に変わっていたものの、波は落ち着くどころか南〜南西寄りの風波が徐々にまとまり、オーバーヘッドから頭半サイズのセットがはるか沖から入ってきていて、かなりハードなコンディションとなっていました。

 自分は、今回のプロジェクトの気象サポートとして参加させていただきましたが、当日は気象および安全面、そのほかパドラーたちのサポートをしつつ、6名のパドラーたちの勇敢な姿を見させていただくために、サポート船に乗せていただきました。今回のサポート船は、普段は数十名も乗れる遊漁船で、1艇6m程度あるカヌーを今回参加の5艇も余裕で乗せることができるほどの大型遊漁船でした。

波伝説サポート

 サポート船は午前5時ころには早々と江ノ島港を出航し、茅ヶ崎の沖合でカヌーと待ち合わせ予定でしたが、江ノ島港を出航する際に、沖合からかなり大きなセットが入ってきていて、そのうねりの高さはおそらく2〜3m程度はあったと思います。サポート船の船長も今後の展開をとても心配する中での慎重な出航となっていました。

 茅ヶ崎沖まではまだ夜明け前でしたが、前日のかなり強い風で空気中の余計な汚れを全て吹き消したほどの澄んだ空気に包まれ、東の空は徐々に明るくなっていて、綺麗な朝焼けが見えていました。また、西には雄大な富士山もくっきりと見え、思わず写真を撮りたくなるほどの綺麗な朝を迎えていました。ただし、そのころ、沖合では南〜南西寄りの強く大きなうねりが頻繁に入ってきていたので、茅ヶ崎のビーチには、頭〜頭半程度のビッグセットが入り続けていたことが容易に想像でき、果たして無事にそのセットをかわしながら安全に沖まで出て来れるかどうかを誰もが心配していました。

 サポート船が茅ヶ崎の沖合に着いてから約30分程度たってから、その6名を乗せた5艇のカヌー(1艇は二人乗り用アウトリガーカヌー)がようやく見えてきました。ホッとする反面、高いうねりの影に入ってしまうと全く見えなくなってしまうその光景を見ながら、彼らの顔色を真っ先に見ると、その顔には、逆に不安な表情が全くないさわやかな表情で、時折笑い顔を浮かべながら、ビーチでの波の大きさを表現するとともに、サーファーもかなり多くいたようで、その波でサーフィンできない悔しさも反面覗かせていました。

 彼らは、やっぱりただのアスリートではなく、オーシャンアスリートということが改めてわかりました。また、同時に、本当によくビッグセットをかわしてきたなと感心させられ、彼らはただものではないことも確認できました。

茅ヶ崎沖
茅ヶ崎沖


 さて、いよいよ午前6時30分に大島横断チャレンジがスタートしました。うねりは大きいものの、風は北西寄りであまり強くはなく、ときおり吹くブローやその風によってできる風波で軽やかにみんなサーフィングしていきます。まるでビーチでのサーフィンができなかった悔しさを晴らすかのように、と思ったのは自分だけでしょうか。

 今回は、1時間に1回の休憩をはさみ、各自で用意した飲食料をサポート船に乗せ、それをぞれぞれのパドラーに海上で渡します。大島までは約70kmありますが、1回目の休憩地点は、約9km地点だったので時速9km/hということになります。かなり順調な滑り出しで、このペースで行くと、午後の早い時間には到着することになります。

 これはかなりのハイペースで、おそらく北西風によって後ろから押される形になるので、それが大きく効いていたようです。また、大きなうねりについては、さほど影響していないことを意味していました。このあと、数回の休憩を入れ、約半分をきたところでも、彼らの疲れはたまってきていることは間違いないのですが、その顔には疲労感というよりは爽快感が漂っていて、途中で変わった北東風による風波でのサーフィングを楽しんでいるようにも見えました。相変わらず、南〜南西寄りの大きなうねりや、大島沖を吹く西寄りの強い風による波も入ってきていましたが、それよりも北東風に押され、その波やうねりをうまく使ったサーフィングを楽しみ、そうした影響でスピードも増していたようです。

 さて、進んでいくうちに目標とする大島は徐々に大きくなっていきます。スタート地点では、まだ雲が多く、大島は見えていませんでしたが、その後徐々に雲が取れ始め、太陽も顔を出し始め、彼らのコンディション的にはかなり好条件となっていたようです。

 途中ウェアを脱ぎ始め、Tシャツで漕いでいるパドラーもいました。また、大島も見えるようになってきたので、それまではサポート船が先導して方向を決めていましたが、大島が見えるようになってからは目標となる大島を目指して漕ぐことができるようになってきていたので、そうした面で精神的な余裕も出てきていたようです。

カヌー5艇

 終盤、疲れもさすがに出始め、何回か沈みもしていましたが、そうしたことにもめげずに、彼らは懸命に漕いでいました。そして大島の北側にある港、岡田港のすぐ隣にある小さなビーチへ全員そろって無事ゴールすることができました。最終難関は、前回のSUP横断を完全に阻んだ大島手前を流れる強い潮の流れだったのですが、その影響もほとんどなかったようです。今回は、海の女神は彼らの味方をしてくれたようです。

 ゴール時間は午後2時ちょうどだったので、約70kmを約7時間30分で漕ぎ切ったのです。スタートした直後とほとんど変わらない、ほぼ同じようなハイペースで漕ぎ切った彼らは、本当に凄い、の一言につきます。ゴール地点では、サポートメンバーが、数分前に港へ着いたサポート船から降りて、ゴールするビーチまでは走って出迎えました。彼らの顔には、疲労感もありましたが、達成感、そして爽快感の方が大きかったことを覚えています。

ゴール
ゴール


 今回のチャレンジを通して、自然を相手とするスポーツでチャレンジすることは多々ありますが、それは間違いだと思っています。自然に対して、ちっぽけな人間がチャレンジ、挑戦することはできるわけがありません。 つまり、それはどんなに小さなチャレンジでも、チャレンジではなく、調和だと思います。今回のパドラーたちは、日々海と戯れ、海のことを理解し、海をリスペクトしているからこそ達成できたことであり、その結果、海と調和できたのだと思います。そんな彼らを間近で見ることができ、自分はとても光栄だし、感動しました。

 彼らの挑戦はまだまだ続くと思いますが、今回の横断で、海から教わること、伝えられること、そして何よりも調和することの重要さを自分たちに教えてくれたと思います。また、彼らもそれらを感じることによって、より豊かな心を持った人となることと思います。ただし、彼らは決してそれを奢ることなく、さりげない表情の中で表現していく魅力的な人間となってこれからもまた進んでいくのでしょう。

 大島OC1横断チャレンジのパドラー、そして関係者の皆さま、本当にお疲れ様でした。そして、貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。

小川予報士

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