ともにプッシュし、励まし合いながらビッグウェイブに挑戦する仲間の存在は大きい。ジョーズで最も評価されているレディースの3人が、左からペイジ・アルムズ、アンドレア・モーラー、ケアラ・ケネリー
オーシャンスポーツ、パラメディックのキャリア、ボランティアワークと多くの功績を残してきた彼女が今見ている先には何があるのだろうか?
『最近特に感じているのが、自分が純粋に「これはやりたい!」という気持ちだけで行動する時はうまくいく。長い間いろんなことをやってきて成功したこともあったし、失敗したり挫折したこともたくさんあったけれど、心の内側がやるべきだと訴えてくることに耳を傾け、その通りに動くことが一番良いということが分かってきたの。
【Follow your heart.】それが実際に一番いい方法だっていうのがよーく理解できるようになった。だから無理をしなくなったわ』
『魂がやりた~いと叫ぶようなものだけをやるようにセレクティブになったというのかな?そうしたらすごく気が楽になったの。結局別に誰かのためにやるわけではなく、最終的には自分の喜びのために目標があり、その目標のために努力をするプロセスを楽しむのが幸せだからやってるんですものね』
【後日談】
世界一大きな波に乗った女性としてギネス記録を作った時に、私がアンドレアにインタビューをしたのが2019年の夏。
その数ヶ月後の冬のビッグウェイブシーズンに入ったある日、アンドレアは素敵な声明を出したのです。
『今日、私はWSLビッグウエイブコンテスト、ピアヒチャレンジに出る資格を辞退することにしました。私のこの決断によって、ニュージェネレーションにドアが開かれ、活躍の場を持てることを願っています。もちろん、ラインナップで波待ちをし、満面の笑顔で波に乗る私がいなくなる訳ではありません。目的が勝つことではなくなるというだけのことです。スコアカードへの執着を手放すことで、私の世界に次に何がやってくるのかを心から楽しもうと思っています』
仕事帰りにパラメディックの制服姿で海をチェックしにきていたアンドレアに、『その簡単ではなかったはずの決断を心から尊敬し評価する』、と私の気持ちを伝えると、
『自分の心に忠実になるためには、奥深くまで自分の心を覗き込まなくてはならなかったけれど、その結果の決断よ。今までより波に対してチャージしないという訳では決してないことは、波が来たら分かるわ』
そう言う彼女の笑い声には突き抜けたような明るさがあった。
そして、シーズンスタートのぺアヒでビッグウエイブがブレイクした日には、公言した通り彼女が大波をチャージしている姿がしっかりと写真に残されていた。そして、別の日には中学生のやる気のあるローカルサーファーガール二人を連れて、アウターリーフでのトゥインのトレーニングをしている様子も写し出されていた。
先日開催されたWSLピアヒチャレンジには出たい気持ちもあったはず……
すでに“MOLLER”と名前がプリントされたジャージも用意されていたが、自分のポジションを17歳の有望株である“アニー・レイカート”に譲ったアンドレア。
大会中は海の上で奔走し、選手たちの膨れ上がったライフジャケットを脱がせて新しいものを着せたり、ジェットの上から的確なアドバイスをしたりして、誰よりもレディース選手をサポートし、応援していたのだった。
そしてアニーは、その期待に応えるべくチャージを見せて、巨大な波にテイクオフして堂々3位入賞となったのだった。
ビッグウエイブを通して、素晴らしい先輩後輩の繋がり、受け継がれるレガシーを感じさせてくれた瞬間だった。
すでにアンドレアは、アニーらに続けとやる気のあるティーンエイジャーをトゥインやアウターリーフに連れて行き、未然に事故を防ぐ知識や技術、そしてビッグウェイブに必要な経験を伝授しているのだった。(了)