岩手・浪板 杉本氏より「現地からのレポート3」

 岩手・浪板ポイントの波情報をいただいている、K-SURFの杉本浩プロよりレポートが届きました。



 震災当日の様子や現在の復興の様子など、レポートが届き次第、順次掲載させていただきます。




『娘との再会』



 川の向こうの釜石の町に着き、中学校へ娘を迎えに行くと、おばさんが迎えに来て連れて帰ったと先生から聞き、義兄の家までヒッチハイクをして行きました。



 そこで娘との久しぶりの再会



 娘は……「パパはもう死んでしまったんじゃないか……」と思っていたようで(T_T)



 義兄の家は、プロパンガスのためガスと水道が使え、電気が通っていないだけ。

 水道をひねって水が出ているのを見ただけで、何だか感動。

 普通のことが普通でなくなってしまった今、普通のことがすごくありがたい。

 雪がちらついていたものの、次いつ来れるか分からないため、水道の冷たい水で頭を洗わせてもらった。



 電気・水道・ガスが使えず、次津波が来たら危ないかもしれない家に連れて帰るより、絶対津波が来ない義兄の家に預けていた方が安心! と、しばらく義兄の家に娘を預けることにしました。

 義兄の家には、娘と同じ年の女の子と2才下の女の子がいて、みな同じ中学校なので、寂しい思いはしない……

 寂しいのは、娘と離れる時の私達親の方。

 帰る時はお互い少し涙ぐみ、「また来るね」と言って少しのお別れ。



 その後、開いている店を探し妻と二人で買出し。

 コンビニはお一人様5点限りだけど、ほとんど物がなく二人で飲むゼリーを10個買った。

 その後、八百屋に行くと残っていたのはお菓子だけ。

 缶詰やパン、カップラーメンなどはすべて売り切れ。

 この先どうなるんだろう……不安。



 避難所に戻り、外で遊んでいた子供たちに買ってきたお菓子を分け、一つ二つの分けてもらった小さいお菓子に喜んでくれる子供たちの笑顔がとても可愛く、皆助かって本当に良かったと感じた。


 店の客が私達を探しに何人も避難所へ来てくれた。

 歩いて・歩いて・ひたすら歩いて、会いに来てくれる仲間。

 こういう時は涙が出る。

 会いに来る仲間から、他の仲間たちの無事を聞きホッとする。

 通信手段も交通手段も無い今は、自分の足だけがその手段となる。



 釜石の町は、プロの窃盗団などが入り、明かりの無い真っ暗な家や店に泥棒が入り、津波で1階だけ被害を受けた家の2階の物が盗まれたり、店の商品が盗まれたり、金庫がこじ開けられたりと、田舎には今までなかった事件が起こり始めた。



 私達の自宅は無事で、いつ泥棒が入るか分からなかったため、余震が続く中自宅に戻り、茶の間で寝る事にした。



 電気も水もガスもダメ、3月だというのに雪も降り寒い。

 家の中でダウンを着て、布団をかぶり、6時には真っ暗になるので、夜はラジオを聞きながら布団の中でじっとしてるだけ。

 静かな家には、地鳴りの音が鳴り響いてるだけだった。



 つづく……



岩手県・浪板

K-SURF 杉本浩

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