当日は気象研究所のほか、高層気象台と気象測器検定センターも公開され、普段見ることのない実験装置や観測器、観測の様子を間近にして、研究官から説明を受けることができました。
特別講演には地震津波研究部の勝間田氏による「平成28年熊本地震に関する気象研究所の取り組み」と、注目の若手研究官、予報研究部の荒木氏による「市民科学を通した首都圏降雪機構の解明#関東雪結晶プロジェクト」が紹介されました。
ユニークなところでは関東雪結晶プロジェクトは、一般市民がスマホで撮影した雪の結晶を研究所に提供する市民参加型研究により、関東の降雪現象の実態解明をしようというものです。
また、午後は上空のオゾン量や気圧や温度などを測るための「オゾンゾンデ観測」の見学に立ち会い、観測器を取り付けた気球を飛ばす様子も公開されました。当日は午後から風がやや強まり、気球を飛ばせる風速5メートル以下という条件には厳しかったものの、多くの見学者が見守るなか、空高くに気球が放たれました。
高層気象台の歴史は大正9年の創設から始まりますが、創設のきっかけとなったのは、1910年3月、急に発達した低気圧が房総沖を通過した際、千葉や茨城の沖合で多くの漁船が遭難し、茨城県だけでも27隻が被害を受け死者65名、行方不明者520名に及ぶ痛ましい海難事故でした。これをきっかけに、より精度の高い予報には高層気象観測が必要だと議会で満場一致されたものの、予算化されるまでには実に10年を要したそうです。
雨という現象1つ取り上げても、そこに到達するまでにはさまざまな要因や道筋が絡み合っており、その原因ひとつひとつを丁寧に紐解くことで、普段目にする天気予報から長い時間を要する気候変動や地球環境変化の予測と対策が、この気象研究所を始めとする気象庁全体で取り組まれていることを垣間見ることができました。