Be-YOU-tiful People 『cbdMD Peahi Challenge 若手の活躍 Vol.1』

岡崎 友子

岡崎 友子
オーシャンアスリート&ジャーナリスト
鎌倉出身。16歳でウインドサーフィンを始め、大学に入ってからマウイに通い、90年代にはウエイブ年間ワールドランキング2位など入賞多数。他にスノーボード、カイトサーフィン、サップ、フォイル、ウイングなどでも黎明期から関わり、世界の情報を日本に紹介している。自分が恩恵を受け、常に多くを学んできた自然を大事にしていかなければという危機感から、近年はキッズキャンプや環境活動にも力を入れている。

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ビアヒを果敢にドロップするタイ Dooma photos rider TySimpson Kane

SLビッグウエイブツアーの出場資格は、トッププロでもなかなか手に入れることができない競争率。
そんな中、今回は10代のローカルサーファーがワイルドカードでピアヒチャレンジに出場したお話。
15歳のタイ・シンプソン・カネ、そしてレディースクラスには17歳のアニー・ライカート、18歳のスカイラー・リックル、ビッグウエイブのニュージェネレーションが育ちつつある。

初めてピアヒの波を見たとき、彼はまだ8歳だった。
それでも彼は、「いつかこの波に乗りたい」とはっきりと目標を見つけた。
尊敬するビッグウエイブサーファー“のイアンおじさん”や“ペイジおばちゃん”がトレーニングに通うジムに行き、自分もいつかあの波に乗れるようになるようトレーニングを始めたいと申し込んだ、8歳で!

9歳ころのタイのライディング(可愛い~!!)

9歳ころのタイのライディング(可愛い~!!)

彼のおかげで、今ではグロムキャンプという子供向けのトレーニングプログラムも生まれ、たくさんのキッズアスリートたちが年齢に合うトレーニングを楽しみながらやっている。
初めてのピアヒは2年前。大会が開催される日、まだ真っ暗な海をジェットに乗って父親とジョーズに向かった。

いつもパートナーとしてジェットで彼を見守る父親と、世界最高峰の大会ジャージをつけているが表情はまだ幼さが残っている

いつもパートナーとしてジェットで彼を見守る父親と、世界最高峰の大会ジャージをつけているが表情はまだ幼さが残っている

大会が始まる前は、選手以外のサーファーらが大会前に波に乗ろうと躍起になってる。
その中で何本かの小さめの波にテイクオフすることができた。
その時の大会の表彰インタビューで、優勝したイアン・ウオルシュは、『自分の勝利と同じくらい嬉しいのが13歳のタイのチャージだ』と誇らしげにコメントしたほどだった。

夢に見てきたことを、まさに実現した瞬間

夢に見てきたことを、まさに実現した瞬間

去年も、タイは同じように大会前にスタンバイして大きな波に何本かテイクオフした。
その後は海上で大会を観戦していたが、どんどんサイズアップして危険が増し、大会が途中でキャンセルとなり、カイ・レニーのトゥインでの独壇場がスタートしたので、吸収できる限りの事を学ぼうとそれをずっと横で観察していたタイに対して、カイは自分のトゥボードに乗ることを促した。

そして、この場所のパイオニアであり、カイが最も信頼しているセイフティービッグウエイブレジェンドのデレク・ドーナーがタイを引っ張って波に乗せた。
彼がその時に乗った波は、巨大で荒々しいものではあったが、フルスピードでボトムターンからチューブに飛び込み、車一台が入りそうなチューブをメイクしたのだった。
もちろん人生で乗った最大の波で、チューブを抜けた時の目を見開いた彼の表情はそれだけで周りのものを感動させた。
まだ15歳の若さではあるが、もう7年もジョーズに乗るためにトレーニングを続けている。

ピアヒのパドルアプローチを世界に知らしめたパイオニア的存在のシェイン・ドリアンが、自らのワイルドカードの出場資格をタイに譲ると聞いた時の彼の気持ちはどんなだっただろうか?
ラッキーボーイと言えばそれまでだけれど、彼のここ数年の努力と真摯な姿勢にシェインも彼にならばと譲ったに違いない。
大会当日にシェインは、わざわざタイに激励の電話をくれたそうだ。
それだけでなく、タイは大会直前にSOSの工場で出来上がったばかりのカスタムシェイプのジョーズガンを渡された。
それはイアン・ウオルシュや他の心ある仲間たちが贈った、マイボードを持っていないタイへのプレゼントだった。
信じられない様子で板を見つめるタイは言葉も出ないようだった。
大会中は落ち着いて2本をしっかりとメイクした。
そして、最後の最後に巨大なセットに思い切りテイクオフ…….
メイクはできずにひどいワイプアウトをしたが、その波へのチャージは出場資格を譲ってくれたシェインおじさんに捧げると言っていた。
残念ながら、新しいボードはワイプアウトで折れて使い物にならなくなってしまった。
でも彼はボード以上のものを確実に手にした。
頑張り続けていれば必ず見ている人はいて、応援してくれるようになる。
まだまだ彼とピアヒの関係は始まったばかり。
15歳の彼の波との向き合い方は、大人の私たちにたくさんのことを教えてくれる。つづく。

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